2024年5月7日火曜日

東京都青少年健全育成条例における「不健全図書」の名称変更に賛成する意見書

 【はじめに】

 この度の、東京都青少年の健全な育成に関する条例(以下「当条例」)における「不健全図書」の名称変更に関するパブリックコメント(以下「当パブコメ」)募集につきまして、感謝申し上げるとともに新しい動きとして期待します。


【意見趣旨】

[1]当条例の「不健全図書」の箇所を改め「青少年販売等制限図書」などに変更する改正案に賛成します。

[2]「不健全図書」の名称変更を始まりとし、不健全図書指定の影響で、当条例の目的を逸脱した効果が生まれている販売規制などについても改善を希望します。


【意見の理由】

[1の理由]

 「健全」という概念は、青少年の「育成」という枠組みでは優生思想の概念を含むことになるため、「青少年の育成」というコンテクストで判断軸として用いるべき適切な概念とはいえないからです。

[2の理由]

 業界で大きな販売シェアを持つ図書販売企業の自主規制により、多くの成人が不健全図書を購入できなくなっている現状があります。これは当条例で求める以上の規制であり、成人の知る権利の侵害にもつながります。


【意見詳細】

[1について]

 辞書によれば「健全」には、「健康であること」「調和がとれていること」などといった意味があります(※1)。たしかに間違ってはいません。しかし、歴史を振り返れば、子どもや青少年の「育成」という枠組みにおける「健全」の概念には、優生思想が含まれていることがわかります。

 近代から現代にかけ、母子の保護および子どもの育成に関する社会福祉政策は、母性主義フェミニズムを背景に発展している部分があります。1918年からの「母性保護論争」(※2)においても、ドイツの「母性保護同盟(連盟)」(※3)の活動や母性主義フェミニストのエレン・ケイの思想が紹介され、我が国の社会福祉政策や世論に影響を与えています。

 母性保護同盟が設立された頃のドイツでは、18 世紀後半にイギリスから始まる産業革命を発端とする急速な都市化、結婚制度の不備(※4)などを要因とし、未婚の母が劣悪な生活環境や貧困に陥り、(未婚の)産婦と乳児の死亡率が高いなどの問題がありました。そこで、「母性保護同盟」が、未婚の母と子の母子ホームの設立、官立産期保険を未婚の母に拡大する運動を行いました。健全な環境や健全な子どもの出産や育成は、第一派の母性主義フェミニズムにとっても大きなテーマだったわけです。

 こうした母性主義フェミニズムやそれを背景とする社会運動は、子どもを「健全に育てる」という言葉とともに、「育成」という枠組みでの「健全」の概念を広める一つの契機にもなりましたが、このコンテクストにおける「健全」とは、善悪の両面を持つ諸刃の剣でもありました。

 当時の母性主義フェミニズムを起点とするそれらの取り組みは、われわれ現代人が恩恵に預かる社会福祉政策に引き継がれている面もあります。また現在では、企業メセナなどを通じた活動など、「青少年の健全育成」をテーマにした有意義な取り組みが行われている例もあります。

 一方で、こうした母性主義フェミニズムには優生思想の影響を受けている面もあり、現在のフェミニズムからの批判もあります。エレン・ケイには、児童福祉と同時に優生思想への心酔もあり、著書「児童の世紀」では、冒頭からさっそく優生学の父フランシス・ゴルトンを褒め称えています(※5)。エレン・ケイは、また、著書「恋愛と結婚」においても、育児中の母親の国家による保護の必要性を説きながら、「社会における母性の役割=種族によい子孫を残す役割」と強調しています。「種族に不利な条件の下における生殖の自由の制限——これこそ生命線なのだ。」(※6)という主張は、まさに優生思想の顕現であるといえるでしょう。

 こうしたエレン・ケイの思想の影響を受けた第一派のフェミニストに、平塚らいてう、山田わかがいます。平塚は「子供の数や質は国家社会の進歩発展とその将来の運命に関係あるから、母の育児は、社会的・国家的な仕事である」などと述べており、現在のフェミニズムからは、「ナショナリズムや優生思想に直結するひびきがある」との指摘も受けています(※7)。

 第一派の母性主義フェミニズムを媒介して広まったこのような「健全」の概念には、健康に子を生み育成するといった面、種族に貢献する優良な血統を選別して残そうという面が地続きとなって混在しています。後者の面は優生思想であり、言うまでもなく差別思想です。

 子どもや青少年の「育成」という枠組みで、優生思想の側面を併せ持つ「健全」という概念を判断の軸とした図書の選別は、育ち伸びる青少年を目の前に適切であるといえるのでしょうか。まず、そのような図書選別の判断の軸として「健全」の概念を用いることをやめるべきです。そして、「不健全図書」という名称も捨て「青少年販売等制限図書」などとし、差別思想を排した名称に変更するべきです。


[2について]

 当パブコメの募集趣旨でも触れられている件ですが、大手インターネット通販サイト等の自主規制による問題です。現在、書籍を扱うインターネット通販サイトの中でも、例えばAmazonのような大きな販売シェアを持つ企業が「不健全図書」の販売自粛をしていますが、これにより、当条例で求める以上の販売規制が生まれています。

 当条例で「指定図書類の販売等の制限」を定める第9条にあるとおりですが、「不健全図書」の販売制限は青少年に対するものであって、成人を対象にはしていません。成人は青少年と異なり購入の機会は制限されていません。それにもかかわらず、Amazonでは「不健全図書」は成人も購入できない状態となっています。すなわち、青少年に対する販売制限という規定を越え、多くの成人に対する販売規制が発生しており、「青少年の健全な育成を図る」といった立法趣旨を逸脱した効果が出ているということです。

 現在では、実店舗としての書店を持たない自治体も存在しています。そうした中、成人がAmazonのような大きな販売シェアを持つインターネット通販サイトで「不健全図書」を購入できないのは、成人にとっては「知る権利」の侵害となるのではないでしょうか。なお、「知る権利」は憲法第21条が保障する「表現の自由」の一部です。



【当条例についての他の疑義】

 大きな改定を目指した2010年3月の当条例の改正案では、「非実在青少年」の文言の不明瞭さも含めそもそもが読みにくく構成された悪文で、あらゆる部分における曖昧性が批判の対象となりました。同年12月の改正案では、「非実在青少年」の文言もなくなっており、当初の改正案に比べれば曖昧性が払拭された部分もあります。とはいえ、第8条および第7条第2号によるアニメや漫画の「不健全図書」の指定については、それを指定する判断者、すなわち、知事や東京都青少年健全育成審議会の委員の裁量に委ねられる部分が大きく、不当な不健全図書指定が行われるのではないかという危惧が、依然として残っています。

 古来より近親相姦を含む創作物は読み継がれ、表現者にとってもモチーフであり続けています。ソフォクレス「オイディプス王」では、オイディプスは実の母と婚姻し子どもももうけているし、紫式部「源氏物語」では、血の繋がりはないものの藤壺と光は母と息子の関係です。

 現代でも近親相姦をモチーフとする作品があります。漫画では竹宮惠子「風と木の詩」があります。この作品には主人公の少年とその父の近親相姦が描かれ性交を含む性的な描写もありますが、父と息子が求め合うなど「不当に賛美」と解釈され「不健全」と判断される危惧があります。

 しかしながら、子をコントロールし性的な関係まで結ぶ父の描写があることで、本来ならば性教育で行うべき「悪い大人がいる」ということについて学べる——それは漫画というメディアであればこそ——青少年が夢中になって読むことができる絶好のテクストでもあり続けたわけで、性教育においても適切この上ない図書であることもまた事実です。

 このように、当条例は、「不健全図書」指定判断者の裁量が大きく相反する判断が可能となっています。いいかげんな判断により図書やアニメの販売が停止され、創作物・表現物の発表の機会が失われぬよう、何らかの解決策が望まれます。


【まとめ】

 ルソーの「エミール」は「子ども」発見の書とされることがあります。確かに、フィリップ・アリエス「<子供>の誕生」をすれば、フランスでは18世紀以前には現在のような「子ども」はいなかったということになります。アリエスは「子供期に相当する期間は、「小さな大人」がひとりで自分の用を足すにはいたらない期間」であったとしています(※8)。これらの見解への疑義はあるものの、19世紀最後の年、1900年に刊行されたエレン・ケイの著作「児童の世紀」の名のとおり、20世紀には児童への社会福祉政策、児童の権利宣言の採択が進みました。1924年の国際連盟による「児童の権利に関するジュネーブ宣言」は、国際機関が採択する世界初の児童権利宣言となりました。1959年には国際連合による「児童の権利に関する宣言」が採択され、1989年には「児童の権利に関する条約」が国連総会で採択、1994年には日本も批准しています。

 こうした「子ども」への取り組みは、上述した母性主義フェミニズムによる社会への啓蒙とも連動しています。エレン・ケイもそうした部分では貢献者といえるでしょう。しかしながら、子どもの「健全育成」というコンテクストでは、その「健全」の概念が優生思想と地続きとなっていることは、今一度思い出しておきたいところです。

 子どもは成人と比べ心身ともに未熟で自己決定能力が不完全な状態にあるのは確かです。悪い大人に騙されたりしないよう保護を必要とする部分もあり、判断力が育つまで年長者の補助が必要です。だからといって、子どもの未熟さを理由に、大人が子どもから発言の機会を完全に奪ってしまうなど、保護が過剰となれば支配となります。未熟とはいえ子どもも人間であり、表現の自由があります。人格があり、意思があり、何かを思っている存在であることは忘れてはなりません。それをわれわれ大人の自戒とし、本稿のしめくくりといたします。


以上


女子現代メディア文化研究会

代表 山田久美子


[注釈]

(※1)「デジタル大辞泉」>健全 (https://kotobank.jp/word/健全-492527)

1 身心が正常に働き、健康であること。また、そのさま。「—な発達をとげる」

2 考え方や行動が偏らず調和がとれていること。また、そのさま。「—な社会教育」

3 物事が正常に機能して、しっかりした状態にあること。「—な財政」

(※2)母性保護論争:1916年、与謝野晶子が書いた記事「母性偏重を拝す<一人の女の手紙>」(「太陽」1916年2月号)がきっかけ。記事で、エレン・ケイを「絶対的母性中心説」と批判、これに対し、エレン・ケイを日本で紹介した平塚らいてうが反論し、論争が始まる。与謝野、平塚の他、山川菊栄、山田わからが加わる。「母性主義フェミニズム」ばかりでなく「女性の経済的独立」等についても意見が交わされた。

(※3)母性保護同盟:1905年成立(~1940年まで存続)。ヘレーネ・シュテッカーによりドイツで設立される。未婚の母と子の母子ホームの設立、官立産期保険を未婚の母に拡大する運動等を行う。

(※4)当時の結婚制度では、財産の管理をめぐり経済的に女性が不利になる部分があった。

(※5)エレン・ケイ「児童の世紀」(富山房百科文庫)P16

(※6)エレン・ケイ「恋愛と結婚・上」(岩波文庫)P162

(※7)奥田暁子、秋山洋子、支倉寿子「概説 フェミニズム思想史」(ミネルヴァ書房)P155

(※8)フィリップ・アリエス「<子供>の誕生」(みすず書房)P1


・東京都青少年健全育成条例における「不健全図書」の名称変更に賛成する意見書(PDF版 426KB)

2024年2月20日火曜日

オンラインシンポジウム「表現者・ファンと炎上社会 ー女性と性表現2ー」につきまして

 本年3月のオンラインシンポジウム「表現者・ファンと炎上社会 ー女性と性表現2ー」開催につきまして、お慶び申し上げます。


 前回2021年の「女性と性表現」は、女子現代メディア文化研究会(以下「当研究会」)の共催のみならず、代表の登壇もありました。そうした中、このたびの「女性と性表現2」につきましては共催団体ではなくなっております。昨今のSNSにおける憶測やデマの拡散を鑑み、その件につきましてコメントさせていただきます。


 まず、当研究会メンバーや代表が、登壇者のどなたかが気に入らないあるいは意見が異なるなどといったために共催を取りやめたなどということは全くありません。このたびのシンポジウムにおける登壇者お一人お一人の成功をお祈りしております。

 そうした中、当研究会がこの度のシンポジウムの共催団体ではなくなっている理由についてです。

 当研究会代表の認識といたしましては、今回は当初から共催団体に入れられていないと考えておりました。この度のシンポジウムに関し、主催者から代表へのバナーデザインの依頼があったものの、共催団体への団体としてのお誘いがなかった上に(シンポジウム自体についての)打ち合わせもなかったからです。

 このようなイベントの場合、共催団体であれば、通常は実際の対面が困難でもZoom等でオリエンや打ち合わせが少なくとも1度はあるものです。しかしながら、今回のシンポジウムにつきましてはそのような機会は全くありませんでした。そして、この流れであれば、イベント当日の会場の立ち合いにも参加させていただけないことは明白でした。実のところシンポジウムそのものについては関わりを遮断されている状態で、要するにこれでは、共催団体としての実態がないし持ち得ないということです。

 そうした状況で、代表が承ったバナーデザインのための原稿において当研究会の名前があることに疑問を持ち、この度の共催団体への連名はお断りを申し出ました。

 当研究会では、実態がない共催その他への名義貸しはお断りしております。当研究会の名義を使用する際には、やはり責任を負わなければならないと考えております。当研究会で過去にリリースした意見書がSNSでの言い争いに利用される昨今、困難な状況も発生しておりますが、責任を持った運営を心がけております。

 なお、女子現代メディア文化研究会は表現規制やメディアについての研究会であって、デザイン制作を事業とする団体ではありません。それは、当研究会のWebサイトや活動を見ていただければご理解できることかとは存じますが、この点につきまして、主催者の勘違いがありそれが齟齬につながったようです。


 当研究会は、「表現の自由」や女性の性表現、フェミニズムにかかわる問題につきまして、今までどおり勉強会等を開催、陳情活動をしていく所存です。

 今後とも、当研究会をどうぞよろしくお願いします。


以上


女子現代メディア文化研究会代表

山田久美子


2023年12月4日月曜日

国連女子差別撤廃委員会に反論し2016年にリリースした意見書に関するデマ拡散の危惧について

 ~国連女子差別撤廃委員会、「日本における女性の権利」保障~ 議題「性的暴力を描写したビデオや漫画の販売の禁止」についての意見書
http://wmc-jpn.blogspot.com/2016/02/blog-post.html

 2016年2月に当会からリリースされた上記の意見書は、昨今のSNSでの論争の中、リリースまでのプロセスや連名の内容が大きな誤謬をともなって宣伝される例も散見されます。誤謬からデマにつながる恐れがございますので、当該意見書の著作者であり文章責任を持つ当会現代表山田久美子から注意点をお伝えいたします。

 当該意見書は作家や漫画家の方のみならず、イラストレーター、美術家、弁護士、法律家、研究者、フェミニスト、元AV女優、元図書館司書、アニメジャーナリスト、シナリオライター、ルポライター、詩人、編集者の方等、職業・立場を超えた大勢の方々にご賛同いただいております。当該意見書の著作者本人といたしましてはその皆様お一人お一人に厚く感謝申しあげたく存じます。



【リリースまでのプロセス】
・2016年2月11日に、国連女子差別撤廃委員会からのツイート(現X)で、「日本による女性の権利保障の実績について審議する」という宣伝の投稿がありました。
 リンク→https://twitter.com/UNHumanRights/status/697456741609574400
・そのツイートに「性的暴力を描写したビデオや漫画の販売の禁止」とありました。
(原文)Banning the sale of video games or cartoons involving sexual violence against women
  ↑
 こちらにつきまして、審議はいいが「BAN」には異議があり、その旨を伝える意見書を作成しました。
・2016年2月28日に当該意見書を当会Webサイトからリリースしました。
・2016年2月28日のリリースの時点での賛同者は藤本由香里明治大学教授と元共同代表の水戸泉氏です。
 ※現在は、水戸泉氏は当会との関わりは一切ありません。
・ですが、作家や漫画家で事前に企画した内容を山田がリライトしたというプロセスで、当該意見書を作成したという事実はありません。
・当該意見書はあくまで山田の発案・アイディアで作成され、リリースののち各方面から大勢のご賛同の連名が集まった形になります。

【意見書の著作者について】
・文章責任は当時の共同代表山田久美子単独となっており、文章責任の署名は、現在もWebサイトの当該意見書でご覧になれます。
・意見書の執筆段階においては元共同代表の水戸泉氏は一切干与しておりません。共同執筆ではないので、文章責任の署名は当時の共同代表山田久美子単独となっているということです。
・水戸泉氏の関与についてあえていえば、完成した意見書に目を通したという事実はございますし賛同の連名もいただいておりますが、これは意見書の執筆段階ではなく完成後のプロセスです。

【当時の意見書リリース情報の拡散について】
・当時の意見書リリース情報のSNSにおける告知や当該意見書へのご賛同の受付は、水戸泉氏にお手伝いいただいた部分もあります。
・とはいえ、意見書のリリース情報はSNSを通じ大勢の方によって拡散されることになりました。拡散してくださったお一人お一人のお力でご賛同者にお集まりいただけたと考えており、現在も大変感謝申しあげる次第です。
・また、SNSばかりではなく、ラジオ番組やJ-CASTニュース、Forbes本国アメリカ電子版等の国内外のメディアの媒介でより広い情報の拡散が行われました。SNSのみの拡散ではこのような情報共有は進まなかったのはもちろんです。メディアの関係者の皆様方には現在も大変感謝申しあげる次第です。

【連名の内容のデマの危惧について】
・ご賛同の連名は、確かに作家や漫画家の方が大勢してくださったのは事実で、現在も大変感謝申しあげる次第です。
・ですが、誰が「中心」ということはなく、あくまでお一人お一人がご賛同の連名を支えたと考えており、そのお一人お一人に感謝申しあげる次第です。
・ご賛同の連名について「100人以上の作家さんが(行った)」と言い切ってしてしまうと、(作家以外の)他のお立場や職業の方が埋もれてしまいます。
・著作者の山田の本職は、デザイナー・アートディレクターであり、上記のような表現が拡散されることで埋もれてしまう側の立場でもあります。
・SNSにおけるこのような誤謬を含む投稿は悪気がないことかとも存じますが、こうした誤謬が大きくなり作家以外の「〇〇の(お立場や職業の方の)人々は、女性の性表現や表現の自由を守ることについて何もしてこなかった」というデマにつながることを危惧します。
・ご賛同の連名は、フェミニストの方からもいただけました。ご賛同の連名においても、「フェミニストは何もしなかった」は誤りです。
・当団体から「作家や漫画家が中心になって意見書をリリースした」というのは、デマです。
  ↑
・当該意見書は作家や漫画家が事前に企画した内容を山田がリライトしたものではなく、山田の発案・アイディアで作成・執筆したもので、完成ののちにリリースしたからです。
・また、意見書の執筆段階においては元共同代表の水戸泉氏は一切干与しておらず、山田の文章責任でリリースしている事実とも食い違います。


以上

女子現代メディア文化研究会
代表 山田久美子


PDFファイル(266kb)


2023年2月12日日曜日

【イベント告知】第4回『ジェンダーって何?』〜フェティシズムとトランスの欲望〜

 第4回目となるオンライントークイベント「ジェンダーって何?」のテーマは、『フェティシズムとトランスの欲望』です。

前回、永山さんから「フェティシズムは奥深いし、広範だし、多岐にわたっているし…」といった発言がありました。それは、前回扱ったシーラ・ジェフリーズの著書へのツッコミでもありましたが、トークはやむなく時間切れとなりました。もっとお話を伺ってみたかった!そこで今回あらためて、「フェティシズム」を含めたトークテーマとしました。

「フェティシズム」というと、世間一般には広義の意味で語られることが多いのかもしれません。しかしながら、狭義の意味での「フェティシズム」はモノを対象としています。「フェティシズム」は、心理学、ひいてはセクシュアリティやジェンダーのカテゴリにおいても研究対象とされていきました。「呪物崇拝」から、現在ではモノや部位に性的な欲望を抱くさまとして、深く考察されています。シャルル・ド・ブロスがこの「フェティシズム」という語を著書に用いて以来200年以上を経て、この概念は各カテゴリを越境し(≒トランス)、意味がそれぞれの場で徐々に変化してもいます。

元々「フェティシズム」は「トランス」との関連も深いので、その関連において考察することでいろいろな「気づき」があると考えました。

今回は、漫画やアニメ、「悪役令嬢転生おじさん」、シシィフィケーション等の話題を交え、「転換」「転生」といった意味も含めた「トランス」という枠組みで、「フェティシズム」と「トランスの欲望」について考察するトークとしたいです。

さて、どんなトークになるでしょう? おなじみ永山薫さんと柴田英⾥さんの対談を通し「フェティシズムとトランスの欲望」を深堀りします。今回も、司会の山田も補足的な解説をします。


[テーマ]

フェティシズムとトランスの欲望


[議題]

・フェティシズムの男女差

・トランスのいろいろ


[開催概要]

・対談者:永山薫 × 柴田英⾥

・開催形式:ZOOMライブ配信(タイムシフト1週間)

・開催日時:2023年3月4日(土曜日)19:00〜20:30(※ただし延長の可能性あり)

・料金:1,000円

・定員:100名

・司会:山田久美子

・主催:女子現代メディア文化研究会

※当イベント視聴用のZOOMのミーティングIDやパスコード、URLは、チケットをご購入いいただいたご本人に、前日にお知らせします。

※物価高や電気料金値上げによる諸々の経費上昇を鑑み、誠に恐縮いたしますが、料金を600円から1,000円値上げいたしました。


[質疑応答について]

当イベントでは、質疑応答のコーナーがあります。質問は事前に下記アドレスから受けつけます。

info@wmc-jpn.com



[お申し込み]

【パブコメ】誹謗中傷等の違法・有害情報に対するプラットフォーム事業者による対応の在り方 について

 総務省からパブリックコメントによる意見募集がありましたので、表現の自由に関わる部分についての意見を提出いたしました。なお、意見につきましてはMicrosoft Wordによる様式の指定がありましたので、当該様式にて提出いたしました。


【募集案件】

誹謗中傷等の違法・有害情報に対するプラットフォーム事業者による対応の在り方について


【詳細】

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban18_01000181.html


【応募日】

2023年1月26日


【意見】


2.全体の検討を通じて留意すべき事項


[該当箇所]

「有害情報」について


[意見]

「有害情報」には道徳的規範を侵犯する表現も含まれる。国や地域の文化や歴史の差異により、道徳的規範さらには記号の意味にも差異があることに留意するべきである。例えば、我が国で寺を示す「卍」がドイツやヨーロッパでナチスの鉤十字を思わせるとの意見が聞かれる場合がある。海外に拠点を置くプラットフォーム事業者であるとしても、日本国内の「有害情報」の判断は日本の価値基準に合わせるべきであり、こうした場合は、こうした記号の利用が道徳的規範への侵犯および差別や誹謗中傷と判断するべきではない。



3-4.その他透明性・アカウンタビリティの確保が求められる事項(運用体制等)


[該当箇所]

「AI等による自動処理」について


[意見]

AIの自動処理を必ずしも否定しないが、AIの利用には人間による確認も介在させるといった、AIと人間のバランスも必要であると考える。AIは必ずしも適切な判断をしない場合があるし、文脈まで読み取らないのが弱点だ。2018年にはフェイスブックが、「ウィレンドルフのビーナス」の画像をサイト上から削除したことが知られている。これについては、市民ばかりではなく、展示を行っているウィーン自然史博物館からも批判を受けている。AIの判断が原因という説もあった。また、フェイスブックは2016年に、サイト上からベトナム戦争の報道写真「ナパーム弾の少女」を削除した後、その削除を撤回している。こちらもAIの判断が原因という説もあった。「ウィレンドルフのビーナス」や「ナパーム弾の少女」が、人間が目視した上での判断で削除に至ったとするならば、その判断をする人材についても適切な人材を選択するべきであるということは付け加えておく。



3-6.取組状況の共有等の継続的な実施


[該当箇所]

「産官学民の協力」について


[意見]

表現の自由は尊いとしても、表現をした結果、権利の衝突や人権侵害が起こった場合を鑑み、個別に裁判を起こしやすくするべきである。この場合、産官学民の協力が必要であることは否めないし、今後ともそういった取り組みは必要であると考える。一方で、「有害情報」の判断について、例えば何を「差別表現」とするのかについては、時代や国、社会、個別の集団、ひいては個人によって差異がある。例えば、我が国で寺を示す「卍」がドイツやヨーロッパでナチスの鉤十字を思わせるとの意見が聞かれる場合がある。公権力が一定の強制力を持ちつつ「有害情報」の判断の主体となると、「有害情報」の判断基準に「公権力」と「国や社会、個別の集団」で差異がある場合に、後者(の「有害情報」の判断基準)が強制的に否定されることになる。したがって、公権力が「有害情報」の判断の主体とならないよう、さらにいえば、公権力が情報の内容への規制を行わないよう留意しながら、産官学民の協力を行うべきである。



以上


女子現代メディア文化研究会代表

山田久美子


2022年10月27日木曜日

【イベント告知】[第3回]ジェンダーって何? 〜「美とミソジニー」とファッションとジェンダーと〜

 第3回目となるオンライントークイベント「ジェンダーって何?」のテーマは、『「美とミソジニー」とファッションとジェンダーと』です。

今回は、書店への撤去要求が起るなど話題の書籍「美とミソジニー  美容行為の政治学」(シーラ・ジェフリーズ/著)を通読し、気づいた点を指摘しながらファッションとジェンダーについて語り合います。

本書は力作かもしれませんが、ファッションや化粧についての雑な研究に基づいた「有害な文化的慣行」を論じています。雑な研究から導き出そうとする、女性のシューズ等のファッションや化粧についての議論には疑問があります。

「表現の自由」の観点から、本書の書店からの撤去には反対です。しかしながら、その雑な研究や議論についての異議は述べたいと思います。

本書を読む限りジェフリーズは、ファッションや化粧を狭くとらえ過ぎているのではないか? という疑問があります。そして本書では、ファッションが持つ問題に解決策を提示してきたデザイナーについての言及がないのも疑問です。そうした疑問を呈しつつ、まずは、ファッションや化粧についてもっと広い視野を持って語り合いたいと考えています。

「脱コルセット」ならば、ココ・シャネルが先駆者ですし、山本耀司はコレクションで「非ハイヒール」を通しています。そもそも、靴はヒールをなくすだけで「身体の負荷」を取り除けるのか? という疑問もあります。化粧もまた女性が行う「メイクアップ」だけではありません。ヘヴィメタルバンドのメンバーに見られるような、男性の化粧もあります。

本来、ジェンダーを考える上でも重要な要素であるはずのファッションや化粧。今回も、おなじみ永山薫さんと柴田英⾥さんの対談を通し「ファッションとジェンダーと」を深堀りします。今回も、司会の山田(本職はデザイナーです)も補足的な解説をします。

今回のイベントも、このような方にこそ推します。

・「ジェンダー」について判りたい方

・「ジェンダー」と「表象」に関連する炎上等、表現の自由に問題意識がある方

・「ジェンダー」を学校とはちょっと違った視点で考えたい方


[開催概要]

・対談者:永山薫 × 柴田英⾥

・開催形式:ZOOMライブ配信(タイムシフト1週間)

・開催日時:2022年11月23日(水・祝日)19:00〜20:30(※ただし延長の可能性あり)

・料金:600円

・定員:100名

・司会:山田久美子

・主催:女子現代メディア文化研究会

※当イベント視聴用のZOOMのミーティングIDやパスコード、URLは、チケットをご購入いいただいたご本人に、前日にお知らせします。


[お申し込み]

https://peatix.com/event/3398654/view


[質疑応答について]

当イベントでは、質疑応答のコーナーがあります。質問は事前に下記アドレスから受けつけます。

info@wmc-jpn.com


2022年4月15日金曜日

国連女性機関の「月曜日のたわわ」広告への抗議意見についての疑義

 【はじめに】

 国連女性機関本部が、「月曜日のたわわ」の全面広告について抗議する書面を日経新聞に送付していたとの一部報道がございます。(※1)
 報道における国連女性機関の意見について2点の疑義を呈します。


【疑義】

(1)胸が大きな女性の表象が含まれる広告が排除されると、胸の大きな実在する女性が疎外感を持つ場合があります。そうした女性にとってはエンパワーメントとは逆とならないか。

(2)国連女性機関が性的か否かの判断をしミニスカート姿を含め性的であるという基準であれば、国連女性機関の理想とする「女性像」の押し付けとならないか。


【疑義の詳細】

(1)について。そのように疎外感を持つ胸が大きな女性が、「女性のエンパワーメント」の対象外となってしまうことについて疑問があります。日本の広告にはJARO(日本広告審査機構)などが取り扱う案件はありますが、広告の排除や掲載中止はあくまで慎重な議論に基づいていなければなりません。

(2)について。規範の判断基準は社会集団によって異なりますが、国連女性機関が判断の主体となっている場合、国連女性機関の価値観の反影が含まれるという問題があります。 
 「アンステレオタイプアライアンス」において「ジェンダー平等」などと謳っておりますが、それは結局の所、国連女性機関が理想とする「ジェンダー平等」であり国連女性機関が社会集団として共有する女性の性規範・理想像を含むのではないかという点があります。
 現在の日本には、実在する人間としてのミニスカートの女子高生は存在します。その女子高生に国連女性機関が直接的に性的規範の圧力を及ぼすことになる可能性自体については検証されなければなりません。それはすなわち、「国際スタンダード」が実のところ西洋的価値観、あるいは、西洋を発祥とする宗教的価値観ではないか? そしてそれにより、日本人の性規範を指導しようという態度ではないか? ということについてです。日本人も含めたアジア人が、あくまで客体として西洋に指導される側でいるべきというならば、ポストコロニアルな視点からも容認できません。
 日経新聞についてもまた、同新聞社が「アンステレオタイプアライアンス」に加盟ているといっても、同新聞社の価値観や理想があります。まして、日本の一般企業の広告が国連女性機関の理想や西洋の性規範の宣伝目的で存在しているのではありません。
 当該広告については日本国内で現在も議論が続いておりますが、まずは日本国内の主体的な議論にまかせるべきであると考えます。


以上

女子現代メディア文化研究会代表/デザイナー・アートディレクター
山田久美子


※1:国連女性機関が『月曜日のたわわ』全面広告に抗議。「外の世界からの目を意識して」と日本事務所長/2022年04月15日(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6257a5d0e4b0e97a351aa6f7?utm_campaign=share_twitter&ncid=engmodushpmg00000004