2023年12月4日月曜日

国連女子差別撤廃委員会に反論し2016年にリリースした意見書に関するデマ拡散の危惧について

 ~国連女子差別撤廃委員会、「日本における女性の権利」保障~ 議題「性的暴力を描写したビデオや漫画の販売の禁止」についての意見書
http://wmc-jpn.blogspot.com/2016/02/blog-post.html

 2016年2月に当会からリリースされた上記の意見書は、昨今のSNSでの論争の中、リリースまでのプロセスや連名の内容が大きな誤謬をともなって宣伝される例も散見されます。誤謬からデマにつながる恐れがございますので、当該意見書の著作者であり文章責任を持つ当会現代表山田久美子から注意点をお伝えいたします。

 当該意見書は作家や漫画家の方のみならず、イラストレーター、美術家、弁護士、法律家、研究者、フェミニスト、元AV女優、元図書館司書、アニメジャーナリスト、シナリオライター、ルポライター、詩人、編集者の方等、職業・立場を超えた大勢の方々にご賛同いただいております。当該意見書の著作者本人といたしましてはその皆様お一人お一人に厚く感謝申しあげたく存じます。



【リリースまでのプロセス】
・2016年2月11日に、国連女子差別撤廃委員会からのツイート(現X)で、「日本による女性の権利保障の実績について審議する」という宣伝の投稿がありました。
 リンク→https://twitter.com/UNHumanRights/status/697456741609574400
・そのツイートに「性的暴力を描写したビデオや漫画の販売の禁止」とありました。
(原文)Banning the sale of video games or cartoons involving sexual violence against women
  ↑
 こちらにつきまして、審議はいいが「BAN」には異議があり、その旨を伝える意見書を作成しました。
・2016年2月28日に当該意見書を当会Webサイトからリリースしました。
・2016年2月28日のリリースの時点での賛同者は藤本由香里明治大学教授と元共同代表の水戸泉氏です。
 ※現在は、水戸泉氏は当会との関わりは一切ありません。
・ですが、作家や漫画家で事前に企画した内容を山田がリライトしたというプロセスで、当該意見書を作成したという事実はありません。
・当該意見書はあくまで山田の発案・アイディアで作成され、リリースののち各方面から大勢のご賛同の連名が集まった形になります。

【意見書の著作者について】
・文章責任は当時の共同代表山田久美子単独となっており、文章責任の署名は、現在もWebサイトの当該意見書でご覧になれます。
・意見書の執筆段階においては元共同代表の水戸泉氏は一切干与しておりません。共同執筆ではないので、文章責任の署名は当時の共同代表山田久美子単独となっているということです。
・水戸泉氏の関与についてあえていえば、完成した意見書に目を通したという事実はございますし賛同の連名もいただいておりますが、これは意見書の執筆段階ではなく完成後のプロセスです。

【当時の意見書リリース情報の拡散について】
・当時の意見書リリース情報のSNSにおける告知や当該意見書へのご賛同の受付は、水戸泉氏にお手伝いいただいた部分もあります。
・とはいえ、意見書のリリース情報はSNSを通じ大勢の方によって拡散されることになりました。拡散してくださったお一人お一人のお力でご賛同者にお集まりいただけたと考えており、現在も大変感謝申しあげる次第です。
・また、SNSばかりではなく、ラジオ番組やJ-CASTニュース、Forbes本国アメリカ電子版等の国内外のメディアの媒介でより広い情報の拡散が行われました。SNSのみの拡散ではこのような情報共有は進まなかったのはもちろんです。メディアの関係者の皆様方には現在も大変感謝申しあげる次第です。

【連名の内容のデマの危惧について】
・ご賛同の連名は、確かに作家や漫画家の方が大勢してくださったのは事実で、現在も大変感謝申しあげる次第です。
・ですが、誰が「中心」ということはなく、あくまでお一人お一人がご賛同の連名を支えたと考えており、そのお一人お一人に感謝申しあげる次第です。
・ご賛同の連名について「100人以上の作家さんが(行った)」と言い切ってしてしまうと、(作家以外の)他のお立場や職業の方が埋もれてしまいます。
・著作者の山田の本職は、デザイナー・アートディレクターであり、上記のような表現が拡散されることで埋もれてしまう側の立場でもあります。
・SNSにおけるこのような誤謬を含む投稿は悪気がないことかとも存じますが、こうした誤謬が大きくなり作家以外の「〇〇の(お立場や職業の方の)人々は、女性の性表現や表現の自由を守ることについて何もしてこなかった」というデマにつながることを危惧します。
・ご賛同の連名は、フェミニストの方からもいただけました。ご賛同の連名においても、「フェミニストは何もしなかった」は誤りです。
・当団体から「作家や漫画家が中心になって意見書をリリースした」というのは、デマです。
  ↑
・当該意見書は作家や漫画家が事前に企画した内容を山田がリライトしたものではなく、山田の発案・アイディアで作成・執筆したもので、完成ののちにリリースしたからです。
・また、意見書の執筆段階においては元共同代表の水戸泉氏は一切干与しておらず、山田の文章責任でリリースしている事実とも食い違います。


以上

女子現代メディア文化研究会
代表 山田久美子


PDFファイル(266kb)


2023年2月12日日曜日

【イベント告知】第4回『ジェンダーって何?』〜フェティシズムとトランスの欲望〜

 第4回目となるオンライントークイベント「ジェンダーって何?」のテーマは、『フェティシズムとトランスの欲望』です。

前回、永山さんから「フェティシズムは奥深いし、広範だし、多岐にわたっているし…」といった発言がありました。それは、前回扱ったシーラ・ジェフリーズの著書へのツッコミでもありましたが、トークはやむなく時間切れとなりました。もっとお話を伺ってみたかった!そこで今回あらためて、「フェティシズム」を含めたトークテーマとしました。

「フェティシズム」というと、世間一般には広義の意味で語られることが多いのかもしれません。しかしながら、狭義の意味での「フェティシズム」はモノを対象としています。「フェティシズム」は、心理学、ひいてはセクシュアリティやジェンダーのカテゴリにおいても研究対象とされていきました。「呪物崇拝」から、現在ではモノや部位に性的な欲望を抱くさまとして、深く考察されています。シャルル・ド・ブロスがこの「フェティシズム」という語を著書に用いて以来200年以上を経て、この概念は各カテゴリを越境し(≒トランス)、意味がそれぞれの場で徐々に変化してもいます。

元々「フェティシズム」は「トランス」との関連も深いので、その関連において考察することでいろいろな「気づき」があると考えました。

今回は、漫画やアニメ、「悪役令嬢転生おじさん」、シシィフィケーション等の話題を交え、「転換」「転生」といった意味も含めた「トランス」という枠組みで、「フェティシズム」と「トランスの欲望」について考察するトークとしたいです。

さて、どんなトークになるでしょう? おなじみ永山薫さんと柴田英⾥さんの対談を通し「フェティシズムとトランスの欲望」を深堀りします。今回も、司会の山田も補足的な解説をします。


[テーマ]

フェティシズムとトランスの欲望


[議題]

・フェティシズムの男女差

・トランスのいろいろ


[開催概要]

・対談者:永山薫 × 柴田英⾥

・開催形式:ZOOMライブ配信(タイムシフト1週間)

・開催日時:2023年3月4日(土曜日)19:00〜20:30(※ただし延長の可能性あり)

・料金:1,000円

・定員:100名

・司会:山田久美子

・主催:女子現代メディア文化研究会

※当イベント視聴用のZOOMのミーティングIDやパスコード、URLは、チケットをご購入いいただいたご本人に、前日にお知らせします。

※物価高や電気料金値上げによる諸々の経費上昇を鑑み、誠に恐縮いたしますが、料金を600円から1,000円値上げいたしました。


[質疑応答について]

当イベントでは、質疑応答のコーナーがあります。質問は事前に下記アドレスから受けつけます。

info@wmc-jpn.com



[お申し込み]

【パブコメ】誹謗中傷等の違法・有害情報に対するプラットフォーム事業者による対応の在り方 について

 総務省からパブリックコメントによる意見募集がありましたので、表現の自由に関わる部分についての意見を提出いたしました。なお、意見につきましてはMicrosoft Wordによる様式の指定がありましたので、当該様式にて提出いたしました。


【募集案件】

誹謗中傷等の違法・有害情報に対するプラットフォーム事業者による対応の在り方について


【詳細】

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban18_01000181.html


【応募日】

2023年1月26日


【意見】


2.全体の検討を通じて留意すべき事項


[該当箇所]

「有害情報」について


[意見]

「有害情報」には道徳的規範を侵犯する表現も含まれる。国や地域の文化や歴史の差異により、道徳的規範さらには記号の意味にも差異があることに留意するべきである。例えば、我が国で寺を示す「卍」がドイツやヨーロッパでナチスの鉤十字を思わせるとの意見が聞かれる場合がある。海外に拠点を置くプラットフォーム事業者であるとしても、日本国内の「有害情報」の判断は日本の価値基準に合わせるべきであり、こうした場合は、こうした記号の利用が道徳的規範への侵犯および差別や誹謗中傷と判断するべきではない。



3-4.その他透明性・アカウンタビリティの確保が求められる事項(運用体制等)


[該当箇所]

「AI等による自動処理」について


[意見]

AIの自動処理を必ずしも否定しないが、AIの利用には人間による確認も介在させるといった、AIと人間のバランスも必要であると考える。AIは必ずしも適切な判断をしない場合があるし、文脈まで読み取らないのが弱点だ。2018年にはフェイスブックが、「ウィレンドルフのビーナス」の画像をサイト上から削除したことが知られている。これについては、市民ばかりではなく、展示を行っているウィーン自然史博物館からも批判を受けている。AIの判断が原因という説もあった。また、フェイスブックは2016年に、サイト上からベトナム戦争の報道写真「ナパーム弾の少女」を削除した後、その削除を撤回している。こちらもAIの判断が原因という説もあった。「ウィレンドルフのビーナス」や「ナパーム弾の少女」が、人間が目視した上での判断で削除に至ったとするならば、その判断をする人材についても適切な人材を選択するべきであるということは付け加えておく。



3-6.取組状況の共有等の継続的な実施


[該当箇所]

「産官学民の協力」について


[意見]

表現の自由は尊いとしても、表現をした結果、権利の衝突や人権侵害が起こった場合を鑑み、個別に裁判を起こしやすくするべきである。この場合、産官学民の協力が必要であることは否めないし、今後ともそういった取り組みは必要であると考える。一方で、「有害情報」の判断について、例えば何を「差別表現」とするのかについては、時代や国、社会、個別の集団、ひいては個人によって差異がある。例えば、我が国で寺を示す「卍」がドイツやヨーロッパでナチスの鉤十字を思わせるとの意見が聞かれる場合がある。公権力が一定の強制力を持ちつつ「有害情報」の判断の主体となると、「有害情報」の判断基準に「公権力」と「国や社会、個別の集団」で差異がある場合に、後者(の「有害情報」の判断基準)が強制的に否定されることになる。したがって、公権力が「有害情報」の判断の主体とならないよう、さらにいえば、公権力が情報の内容への規制を行わないよう留意しながら、産官学民の協力を行うべきである。



以上


女子現代メディア文化研究会代表

山田久美子