2019年5月27日月曜日

「アクセス抑止方策に係る検討の論点」に対する意見

【意見の趣旨】

[論点1、論点3について]

アクセス抑止方策について、関係者の共通認識のもと幅広いユーザーの声に耳を傾け議論を進めることに賛成である。


[論点5について]

「アクセス警告方式」の実施の前提について議論することに賛成だが、その方式が、問題となっているいわゆる海賊版サイトへのアクセスを抑制する目的を達成する手段として妥当か否かという前提についても、議論するべきであると考える。
「アクセス警告方式」は、海賊版サイトへのアクセスを抑制する目的を達成する手段としては妥当とは言い難い。なぜなら、海賊版サイトの種類によっては用いること自体困難で、著作権についての啓蒙効果もさほど期待できないからである。



【意見の詳細】

[論点1、論点3ついて]

業界関係者としての漫画家・クリエイターはもちろんのこと、インターネットに関わるユーザーを対象に、幅広くヒアリングをすることは必要である。
今日のインターネットは、情報インフラとしての性格を持ち多くの市民の生活の一部である。したがって、市民への影響を考えた上でアクセス抑止方策を設計するべきである。


[論点5について]

「アクセス警告方式」の実施の前提について議論するべきである。それは、違憲性の有無を今一度確認すること、また、海賊版サイトへのアクセスを抑制するという目的を達成する手段が、「アクセス警告方式」でなければならない必然性について議論することを含めてである。
この度の「アクセス警告方式」は、ISPとの約款にその方式を用いる同意の許諾を記載することで、個々のユーザーごとに個別に同意を得ることにより、ユーザーとの「真性の同意」が成立するとのことだが、そう断言するのは可能だろうか。
上に述べたように、インターネットは今日では情報インフラとしての性格を持つ。それは、IoT技術やウェアラブル端末の開発が進む今日において、インターネットなしに市民の生活を成り立たせるのは困難さを伴うということである。市民は、逃れようなくISPに関わらざるを得ない状況があるのだから、約款への同意といっても、約款に同意する以外に選択肢がない点では止むを得ずに選択した不本意な同意を含む状況がある。致し方なく不本意に同意せざるを得ないならば、半ば強制的な同意で強要に近いわけで、これが「真性の同意」として成り立つかといえば疑問が残る。したがって、違憲の可能性は払拭できない。
そのように、通信の秘密を侵す違憲の可能性を払拭できないにもかかわらず、「アクセス警告方式」を採用する利益は、さほどではないのではないかという疑いがある。
近年ではYouTubeで漫画海賊版が配信されている(漫画のページそのもので、物語丸ごとを順番に静止画の映像として配信する内容で、引用とは異なる。この動画「進撃の巨人117ー日本語版|Attack On Titan 117 Full JP」(https://www.youtube.com/watch?v=D4eE5LxUqv8)のような例)が、短期間配信し儲けを出しては、動画やアカウントを消すといった状態となっている。こうした種類の漫画海賊版サイトに対しては、アクセス警告方式は用いること自体が困難だと考える。
まず、ユーザーがYouTubeのこのアカウントにアクセスしようとした時や、まして、YouTubeのトップページにアクセスしようとした時に、アクセス警告のアラートを出すなどということは、現実的には実現し難いだろう。また、短期間の配信のため、悪質な海賊版サイトとして選定するのにかける時間より先に、サイトが消滅するのではないかという疑いもある。
したがって、このような種類の海賊版サイトに「アクセス警告方式」を用いるのは困難であろうし、この方式を有効に用いることができるかについては、議論の余地がある。
それよりは、現状のYouTubeの規約で、YouTubeの配信動画に海賊版の動画を発見したとしても、著作権者や代理人でなければ著作権侵害として報告できないことにより、海賊版サイトが放置されるのだから、それについて方策を講じる方がはるかにスムースだろう。例えば、著作権者に報告するための窓口を、YouTubeか出版社かのどちらかに設置するなどの手段の方が、現実的ではないだろうか。
そして、「アクセス警告方式」による啓蒙効果だが、資料(総務省から公開された資料の「別紙1」)で示されるアラートで、ユーザーが即座に著作権を重んじるようになり、海賊版サイトの利用について罪悪感を抱くようになるというのは、いささか安直ではないかとも考える。
それよりは、例えば、デザイン・クリエイティブ業界向けの雑誌や書籍のように、海賊版サイトユーザーの中心層が読む漫画雑誌等に著作権についてテーマにした連載や特集を設け、上記のアラートのように数行のコメントに終わらすことなく、数ページを割いて解説をすることを繰り返すという情報伝達の方が学習効果があるのではないか。さらに言えば、学校教育の中で、著作権について扱うことが学習効果があり啓蒙につながるのではないか。
以上から、「アクセス警告方式」は、違憲の可能性が残る反面、場合によっては用いるのが困難で啓蒙効果もさほども期待できないし、他の手段を検討する方が現実的で望ましいといえる。したがって、「アクセス警告方式」は、海賊版サイトへのアクセスを抑制する手段としては妥当とはいえず、必ずしも「アクセス警告方式」をその手段として用いることに固執する必要はないのであって、他に効果が期待できる手段を模索するべきであるといえる。

以上


女子現代メディア文化研究会代表
山田久美子

2019年4月2日火曜日

「児童売買、児童搾取および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の履行におけるガイドライン案」に対する意見


【意見趣旨】


[意見の趣旨1]
61項について。「児童売買、児童搾取および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書」第2条(C)の定義を拡大し、「児童ポルノ」に素描や漫画による架空の児童の表現を含めることに反対します。
62 項について。法律で禁止する「児童への性的虐待素材」に非実在児童の表現を含めることに反対します。

[意見の趣旨2]
102 項について。性的被害を受けた実在の子どもたちを保護し援助する枠組み作りに賛成です。 そしてこの枠組みは、個人だけでなく、商業、政府、そして非政府組織によるあらゆる搾取から子どもを守らなければなりません。



【意見の理由】

[意見の趣旨1の理由]
( A)素描や漫画、その他で表現された架空の児童・非実在児童に対する性的虐待は、現実の人権侵害ではなく、児童の権利擁護としての意味がないからです。
( B)現在の日本の漫画には性的虐待やレイプを含む表現がありますが、それらは作家による想像の産物であり、実際に児童への性的虐待を行ってその行為を記録するようなとは違法です。漫画は架空の表現であるからこそ現実の児童の性的虐待を考える材料として用いることも可能です。こうした作品の禁止は、市民の考える機会を奪うものです。

[意見の趣旨2の理由]
(A)児童への性的虐待が随所で発生していることは確かであり、実在する被害児童の保護・救済は喫緊の課題だからです。そしてその加害者は、個人のみならずNGOや国連事業であることすらありえます。
( B)漫画等の架空の児童への性的虐待の取り締まりに尽力し、本来、保護・救済されるべき実在する児童を放置しないよう求めるからです。



【 背 景 】

[意見の趣旨1について]
私どもは、児童の権利擁護については大いに賛同します。しかしながら、「児童ポルノ」の定義に架空の児童の表現を含めること、法律で禁止する「児童への性的虐待素材」に非実在児童の表現を含めることについては反対します。
なぜなら、架空の児童・非実在児童には人権がなく、児童の権利擁護としての意味がないからです。
日本の漫画には、架空の児童・非実在児童への性的虐待やレイプの表現を含む作品があります。その中には、性的虐待の問題を考える上でのテクストとしての価値も持つ作品が含まれ、「風と木の詩」(竹宮惠子・作)、「BANANAFISH」(吉田秋生・作)等が該当します。「BANANA FISH」は昨年アニメーション化もされています。主人公の少年が「児童ポルノ」のビデオに出演している描写がありますが、その過去に苦しみながらも生きようとするという物語です。こうした作品が絶版となれば、児童が性的虐待の問題について考える機会を奪われることにもなり、「児童の権利に関する条約」において締結国に奨励している「児童が多様な情報源からの情報及び資料を利用し得ることを確保する」という条文にも反します。

[意見の趣旨2について]
児童の性的虐待被害が世界の多数の国で発生することは疑いがありません。しかし、その加害主体が常に分かりやすい悪人とは限られず、A/71/818 文書(http: //undocs. org/A/71/818)で示されるように、例えば国連職員が加害者であることすらありえます。
国連職員が加害の主体となる児童への性的虐待は、国連職員が立場を利用し、児童の弱い立場につけこんでいる点で、構造的な問題を含みます。権力者からの被害児童の保護という観点は重要であり、いかなる立場の人物からの性的虐待であっても被害児童が救済される相談窓口を早急に設け、たとえ加害者が政府要因や国連職員であっても児童の救済につなげられる枠組み作りを行う必要があります。
漫画等における架空の児童への性的虐待の取り締まりに尽力することの問題点は、そうした本来守るべき被害児童が放置され、本来救済されるべき実在する児童のために充てられるはずだった労力が奪われることでもあります。



【 結 論 】

この度のガイドライン草案における「児童ポルノ」の定義の拡大は、児童の権利擁護にとって意味がないばかりか、児童から失われる利益が大きく、児童の権利擁護の手段として妥当ではありません。そして、今や権威ある人々による児童への性的虐待こそが看過できない状況となっており、漫画等の架空の表現に責任を転嫁することなく、現実の人権侵害に向き合う必要があります。
どういった対象であれ、権利の保障を行う際には、その目的を達成する手段は確実な効果が見込まれ、なおかつ、それぞれの国の実情に適っていなければ意味がありません。
日本の、とりわけ漫画等の創作物については、しばしば「権利の保障」を目的とした、手段としては妥当とはいえない不当な規制を求められています(※補足資料)。しかし、日本の実情に合わせ不当な規制を行わないことこそが、我が国の児童の権利擁護につながると、私どもは考えております。


以上
女子現代メディア文化研究会代表 デザイナー・アートディレクター
山田久美子




[※補足資料]

「~国連女子差別撤廃委員会、「日本における女性の権利」保障~議題「性的暴力を描写したビデオや漫画の販売の禁止」についての意見書」
http://wmc-jpn.blogspot.com/2016/02/blog-post.html

※国連子どもの権利委員会に提出したパブリックコメントにはリンク先意見書の本文を掲載しましたが、当サイトでは同じ意見書を繰り返し掲載することとなりますので、ここでは割愛しURLのみ掲載いたします。



「児童売買、児童搾取および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の履行におけるガイドライン案」に対する意見(PDF版279KB)


Comments on “DRAFT Guidelines on the Implementation of the Optional Protocol to the Convention on the Rights of the Child on the Sale of Children, Child Prostitution, and Child Pornography”

The Arguments:

1. 
In Article 61, we oppose the stretched definition from Article 2 of OPSC, and also oppose including fictional child representations, such as drawings, cartoons, and written materials into the definition. 
In Article 62, we oppose labeling representations of non-existing children as child sexual abuse material and also oppose it by prohibitive legislation. 

2. 
In Article 102, we agree to protect and assist sexually victimized children. The framework must defend an existing child from any exploitational bodies, not only by individuals but also commercial, governmental, and non-governmental bodies.


Reasons for Arguments:

1-A) 
Drawings, cartoons, written materials, or any other forms of expression that does not directly 
infringe any existing individual human rights, even if depicting fictional children engaged in any fictional sexual activities. Banning imaginary representation is not equal to the protective action of human rights. 

1-B)
 It is a fact that there are several manga titles that depict sexual abuses and rapes, however, they are represented by the imagination of an author, without a record of existing child abuse, which is a criminal offense. Manga is a form of fictional representation, which provides this artform with the potential to represent materials to consider existing child sexual abuses. 

2-A) 
The inevitable truth is that child sexual abuse occurs in many places, and the protection and support of victimized children is our zero-tolerance task. It should also be noted that existing child molesters are not only nameless individuals but also NGO members and even UN staff. 

2-B) 
We request everyone to save and protect our children from existing harms, and we also request not to try to save imaginary non-existing children from fictional child abuse.


Background:

1. 
We strongly support the idea of protecting the human rights of all children. However, we oppose including fictional representations of children into the definition of "child pornography", and we also oppose including any non-existing childlike representation into the definition of "child sexual abuse materials". This is because fictional representations and non-existing childlike representations do not have individual or group human rights to be saved. 
There are manga titles which depict child sexual abuse and rape that are based on imagination and they are non-existing fictional children. Not a small number of these works, such as "Kaze to Ki no Uta" by Keiko Takemiya and "Banana Fish" by Akimi Yoshida, may have critical social value that considers what real sexual abuse is. 
Especially, "Banana Fish", which was adapted into a television series in 2018, and depicts the protagonist as a sex slave who is victimized during filming. Its story emphasizes the struggle to survive through his suffering. These narratives are also put in danger by the change and stretch of definition to this fictional area. It may also deprive the rights of children to think about and/or discuss sexual abuse problems and may also conflict with the Convention on the Rights of the Child, Article 17, which encourages international cooperation of cultural diversity. 

2. 
There is no doubt that child sexual abuse occurs all over the world. However, the perpetrators are not always typical criminals. According to A/71/818 (http://undocs.org/A/71/818) and related documents, even United Nations officers can be an exploitation body. The exploitation of children by socially powerful people is an abuse of power and these injustices reflect social and structural problems. The protection of exploited children from powerful people is critical. Children should be rescued from any sexual abuse, by any person, including all authorities. A protective framework for victimized children by any persons, such as government officers or UN officials is needed. 
Political control over the representation of fictional children and imaginary child abuses may be a distraction of attention to protecting victimized children and misuse of our efforts and resources which should be used to save our existing children.


Conclusion

    The extended definition of child pornography in the draft guidelines does not function for protecting the rights of existing children. Furthermore, it may deprive children of social benefit and is not reasonable for child rights protection. Considering the recent UN case above, where actual child sexual abuses were perpetrated by members of an international power, imaginary fiction is not appropriately placed by being at the front of these rights issues. It is critical to face real existing human rights violations without transferring responsibility to non-existing fictional expressions. 
    To guarantee any rights by the states, it does not matter who the targets are; all actions should be achievable, effective, and acceptable to all people of each country. Often, political action against manga and other imagination-based representations apply pressure to comply with unfair regulations that are camouflaged as "Rights Protection" (Appendix). Therefore, true rights protection must also apply to manga to eliminate the unfair suppression of imagination and to protect our children's rights. 

Sincerely, 


March 30, 2019 

Kumiko Yamada 
Representative Director of Women's Institute of Contemporary Media Culture/Designer/Art Director






2019年1月7日月曜日

文化庁著作権課にパブリックコメントを提出しました

文化庁著作権課からパブリックコメントの募集がありましたので(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001021&Mode=0)、インターネット上の静止画ダウンロード違法化案について白紙撤回を求める意見としてまとめ、本年1月5日に提出させていただきました。意見部分を掲載いたします。

なお、意見は2000字以内とのことでした。ライセンスビジネスに関わるクリエイターの実務の現状をお伝えするには、2000字では足りず、内容は圧縮せざるを得ませんでした。そのため、読みづらい部分もあろうかとは存じますが、恐れ入りますがご容赦いただけると幸いです。


【意見】

インターネット上の静止画ダウンロード違法化案は白紙に戻すべきである。
当会代表の山田は現役のデザイナー・アートディレクターである。専門分野は漫画・アニメ等のキャラクターグッズデザインで、ライセンスビジネスに関わる。この立場からの意見を申しあげる。
私どものビジネスはイメージを扱うのであって、イメージに傷がつくこと自体が損害である。したがって、罰則の有無に関わらず、第三者から違法行為の疑いをかけられるだけでもビジネス上の損失となり得る。
そうした中、私どものような立場の者が業務上必要に迫られ版権元の著作物を入手する例を、ビジネスの部外者が、正当性を欠く行為と区別できる確証がないことにより生じる問題がある。
私のような立場の者は、業務のため常に版権元の支給キャラクターイラストや背景画像等(専門的には「アート」と呼ばれる。以下「アート」と呼称。なおアートによっては漫画やコミックの書籍の画像そのものも含まれ、専門的には「コミックアート」と呼ばれる。以下「コミックアート」と呼称)を共有している。私どものビジネスで、あるプロジェクトでキャラクターグッズを作るという際には、製造工場に至るまでプロジェクトに関わる版権元以外のクリエイターや企業が、アートが配置された入稿(版下)データを含め、そのようにアートを共有する。そもそもライセンスビジネスには、版権元にライセンス料支払われメーカーがグッズを制作するビジネスモデルもある。
このように、ライセンスビジネス業界において版権元の企業は、制作会社や製造工場までを必ずしも傘下とせず外部の企業に頼っている現状がある。かつ、このビジネスに関わるクリエイターおよび企業には守秘義務が課せられるわけで、部外者はそのプロジェクトの内部を公開が許諾された僅かの範囲でしか知ることはない。
この状況で、ビジネスの部外者が、版権元以外の私どものような立場の者が共有する「コミックアート」について、海賊版の画像と区別をつけられるのか甚だ疑問である。
私は今、日本の弁護士が漫画海賊版サイトの運営者を特定するということを実現しているにもかかわらず、文化庁の資料のように「コンテンツの削除要請すらできない」と、エビデンスを無視し、思い込み激しく主張しているのを目の当たりにしている。他にも運営者特定を行う動きがあるわけで、そのような認識は大きな誤謬を含む。こうした例を鑑みた時、業務上正当な理由で支給された「コミックアート」について、捜査機関であれビジネスの部外者から漫画海賊版サイトの画像であるとの誹りを受ける可能性は免れず、第三者に違法行為をしていると言い騒がれてしまった場合には、イメージダウンが生じビジネスにとって大きな損害となる。
そして、ダウンロード違法化の対象とする静止画の範囲が拡大されるとなれば、企画書や商品カンプ制作を業務に含むクリエイティブ業界のビジネスは遂行が困難になることも考えられる。業務上止むを得ずインターネット上の静止画ををダウンロードしたとして、第三者に不正な行為をしているとの誹りを受ける可能性は免れないわけだが、だからといって、そうした画像のダウンロードなしでは、この業界の業務が成り立つわけもない。
デザインには流行がある。ある種のデザイン(例えば「マリンルック」のような一定の型)に「寄せる」ことは、そもそも宿命である。とはいえ、他社のものにあまりに寄せすぎないようにするためにも、同業他社の商品画像をインターネット上からダウンロードして収集し、資料にすることはしばしばある。これは、権利侵害を引き起こさず、かつ、業務を円滑に遂行するための止むを得ない慣習となっている。
また、グッズデザインに話を戻せば、アートのデータによっては色がCMYKかRGBで、PANTONE等の特色の指定がされておらず、グッズ製造に適さない状態となっているため、新たに特色指定をすることもある。ディズニー等のグッズ制作の歴史が長いキャラクターコンテンツのアートでは特色の指定がされているが、新しく参入してきた漫画やアニメのアートは、特色の指定がされていない例がまだまだある。こうした際、キャラクターの同一性保持のため同じキャラクターのグッズを制作する同業他社の商品で使用している色を参考にしなければならず、画像をダウンロードして収集し、特色指定の資料にすることもある。
以上のように、私どものようにライセンスビジネスに関わっていれば、コミックアートを共有し、インターネット上からダウンロードした画像を保有することになる例がある。業務遂行上、逃れようがない正当な行為ではあるが、同時に、不当な違法行為をしているとの誹りを受ける爆弾を抱えることにもなる。
したがって、すべての混乱の原因となるダウンロード違法化はせず、白紙撤回することを求める。

以上

女子現代メディア文化研究会
代表 山田久美子

2018年10月30日火曜日

静止画のダウンロード違法化に反対する声明


【はじめに】

本日10月30日に、文化庁が、インターネット上の静止画のダウンロードを違法化する著作権法改正のための検討を始めたとの報道がありました(※注1)。来月にも具体的な制度設計に入る予定とのことです。
この「静止画のダウンロード違法化」については、漫画海賊版サイトのブロッキング問題を扱う政府の会議においても、検討事項として掲げられて来ました(※注2)。
女子現代メディア文化研究会(以下「当会」)代表の山田は、現役のデザイナー、アートディレクターです。そうしたクリエイティブの現場に立つ者としても、この「静止画のダウンロード違法化」には予てより疑問を持っており、この度は、反対声明を発表させていただく運びといたしました。


【漫画海賊版サイトへの対策を巡る会議の経過について】

漫画海賊版サイトへの対策を巡っては、政府において会議が継続しております。対策案としてブロッキングを含むという本年4月の報道以降(※注3)は特に注視しておりますが、内容は法治国家の体を揺るがしかねない杜撰の極みとなっております。内閣府の会議では、委員の法律家等から非常に丁寧で解りやすい資料が、せっかく提出されているにもかかわらず、違法性阻却事由としての「緊急避難」を成立させる要件についての理解が進まないまま、一部の委員が感覚的な判断により結論を急ごうとしております。
本年10月には、日本の弁護士が漫画海賊版サイトの運営者を特定するということも実現しております。ブロッキングの他に実効的な手段が存在しないか事実上困難であるかどうかの検証対象としては、適していると考えて妥当でありそうなものですが、政府の会議の傍聴人からは、こうした取り組みが見過ごされたままであるとの証言も得ています。



【意見趣旨】

こうした政府の会議に付随し始まったとされる「静止画のダウンロード違法化」の検討なのだから、文化庁の会議もまた、立法を検討する会議であるにもかかわらず、感覚的な判断により結論を急ぐこととなりかねない。そうした面もふまえ、静止画のダウンロード違法化に反対する。


【意見の理由】

「海賊版だと知りながら」(静止画を)ダウンロードしたということの証明が可能であるかについても疑問がある中で、企画書や商品カンプ制作の際、業務上止むを得ず、インターネット上の画像をダウンロードし収集せざるを得ないシーンは、デザイン業を始めとしクリエイティブ業界においては尽きない現状となっており、「静止画のダウンロード違法化」となればクリエイティブ業界の業務は遂行が極めて困難になることが予想されるからである。


【理由の詳細】

当会代表の山田(以下「私」)の、デザイン業を生業としインターネット上の静止画を扱う実務者としての実例を掲げつつ、述べさせていただきます。
私は生業としてグッズやグラフィックなどのデザイン、アートディレクションを行なっており、業務によってはアパレルのジャンルにも及びます。
デザインには流行があります。デザインは流行を取り入れて行うシーンがあり、特にアパレルに関われば、そのシーズンの流行色や流行の様式(例えば「○○ルック」あるいは「○○年代風」といったような)を取り入れながら競うことになります。このことから解るように、デザインは、ある種のデザインに「寄せる」ことは宿命です。
とはいえ、他社様のものとあまりに近くなりすぎたり、完全に一致してしまうデザインについては権利侵害を含む問題があり、訴訟となり得ます。そういった事態が起こらないようにするためにも、他社様の商品画像をインターネット上からダウンロードして収集し、資料にすることはしばしばあります。そうした例に限らず、インターネット上の画像をダウンロードして資料にすることは、現在は、権利侵害を引き起こさず、なおかつ、業務を円滑に遂行するための、止むを得ない慣習となっております。
このように、業界内で認められている範囲での静止画のダウンロードであれば、商業上特段に問題にはなりません。問題が起こるとすれば、業界のこうした現場を知らない第三者が正義感に捉われ不必要な介入をしてきた時であるといえましょう。
インターネット上で、資料作成等のための静止画を探す際は、グーグルなどで「画像検索」して表示し、その中から取捨選択をしていきます。その中に、海賊版の画像があっても気がつかない場合もあります。こういった場合、対象となる画像が海賊版であるのを知らなかったとことの証明は、極めて困難になるのではないでしょうか。
したがって、法改正があれば、業務上必要に迫られて止むを得ずにインターネット上の静止画をダウンロードしたことにより、罪に問われるクリエイターが続出する結果となるのではないでしょうか。
業界の実務の現場を知らず理解しようともしない第三者は「招かれざる客」であるということです。


【まとめ】

報道では、インターネット上の静止画のダウンロード違法化については、来月にも具体的な制度設計に入る予定であるとのことです。これによって影響を受けるのは、私のようなデザインを生業とするクリエイティブ業界の人々であるのは明白でありますが、それに止まらないと考えます。クリエイターのみならず、他の業界の営業職の方もプレゼン資料を作成する機会があります。こうしたプレゼン資料にインターネット上の静止画を用いる例はあるのではないでしょうか。漫画海賊版サイトへの対策として始まったこの度の検討ですが、もはや、それを逸脱しており、資料を作る業務を伴う職種全体への影響は、免れないのではないかと考えます。
私のような立場の、連日、業務を遂行し現場で汗を流すクリエイターの元には、すでに、来月にも具体的な制度設計をする予定であるとのことは、報道があるまで全く伝わって来はしませんでした。私も、デザイナー、アートディレクターとして著作物を持つ身ですが、文化庁までもが、私のような立場の者をまさに軽んじ蔑ろにする態度です。我が国の文化を生み出してきたクリエイティブ業界の実務の現場を守りたいと願えばこそ、政府の的外れな法改正には反対する次第です。


以上

女子現代メディア文化研究会
代表 山田久美子


[注]

※注1:「海賊版漫画、ダウンロード違法に? 静止画も対象に、法改正検討」(10月30日 朝日新聞)
※注2:「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(第6回)中間まとめ骨子(案)等に記述あり)
※注3:本年4月6日の毎日新聞の第一報、「政府(犯罪対策閣僚会議と知的財産戦略本部)がプロバイダ(ISP)に、「漫画村」等の海賊版サイトをブロッキングするよう要請する調整に入った」という記事


「静止画のダウンロード違法化に反対する声明」(PDF版426kb)

2018年3月19日月曜日

「迷惑防止条例」改正案に反対する意見書


【はじめに】

本年2月21日からの東京都議会定例会に、警視庁から、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「迷惑防止条例」)改正案が提出されました。この条例案は3月22日採決、3月末の本会議で成立の見通しとなっています。
この度の「迷惑防止条例」改正案においては、つきまとい行為における「行為類型」の追加や、つきまとい行為における罰則の強化が含まれております。これらには、表現の自由に関わり民主主義の根幹を揺るがしかねない内容も含まれており、看過しがたいと考えます。
「迷惑防止条例」を作成した目的は、本来、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もつて都民生活の平穏を保持すること」(第1条)です。この度の「迷惑防止条例」改正案は、そうした目的から逸脱した内容となっているのではないかという危惧があります。
つきましては、この度の「迷惑防止条例」改正案に反対し、意見を述べさせていただきたく存じます。



【意見趣旨】

以下に述べる意見から、この度の「迷惑防止条例」改正案について、廃案を求める。

[ 意見1 ]
「条例案の概要」(※1)、「3 つきまとい行為等の行為類型の追加(第5条の2)」の、「(1) 規制対象となる行為類型の追加」おいて、内、「名誉を害する事項を告げること」は、追加の必要なし。

[ 意見2 ]
「条例案の概要」、「3 つきまとい行為等の行為類型の追加(第5条の2)」の、「(1) 規制対象となる行為類型の追加」おいて、内、「性的羞恥心を害する事項を告げること」は、追加の必要なし。

[ 意見3 ]
「条例案の概要」、「3 つきまとい行為等の行為類型の追加(第5条の2)」の、「(2)行為類型の一部追加」おいて、内、現行の1号の規定に加え、「みだりにうろつくこと」は、追加の必要なし。

[ 意見4 ]
「条例案の概要」、「3 つきまとい行為等の行為類型の追加(第5条の2)」の、「(2) 行為類型の一部追加」おいて、内、現行の3号(連続電話等)の規定に加え、「SNS等への連続送信」は、追加の必要なし。

[ 意見5 ]
「罰則(第8条関係)」は慎重な検証が必要。



【意見趣旨の理由】

[(1)について]
「名誉を害する事項を告げること」は刑法上の「名誉毀損罪」での取り締まりが充分可能であり、あえて「迷惑防止条例」の取り締まり対象に加える必要がないからです。
また、「名誉毀損罪」は親告罪で告訴がなければ処罰ができない一方で、「迷惑防止条例」は非親告罪であり、捜査機関の判断で逮捕や処罰が可能となります。「名誉を害する」とする事柄について恣意的な解釈が可能であり、条例の運用によっては濫用につながる恐れがあることも理由です。

[(2)について]
迷惑防止条例が非親告罪であるという中で、「性的羞恥心を害する事項」という文言については主観性に頼らざるを得ず、捜査機関の主観的かつ一方的な解釈が可能であり、条例の運用によっては濫用につながる恐れがあるからです。

[(3)について]
「みだりにうろつく」という曖昧な文言の捜査機関による恣意的な判断により、議員の方の選挙に関わる活動やビラ配りをはじめとし、政治に関わるあらゆる活動、デモ等が、取り締まり対象とされる恐れがあるからです。

[(4)について]
SNSの場合、例えばツイッターに連続投稿をした内容について、第5条の2で禁止される「正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」での行為に何が該当するのか判断するのは捜査機関であり、条例の恣意的な運用が可能になるからです。
また、不特定多数の対象に向かってSNSで発信する行為と、特定の人物に対し(拒まれたにも関わらず)連続電話を行うという行為は、コミュニケーションの質的な隔たりがあり、迷惑防止条例上の同列の迷惑行為として扱うことに、甚だ疑問が残ります。

[(5)について]
罪に対し適切な罰則であるか否かの検証は必要である一方、罰則を強めることによって必ずしも犯罪が減少することにはならないわけで、罰則の強化については識者を交えた慎重な検証や議論が必要で、拙速な判断は避けるべきだからです。



【  結 論  】

このように、この度の「迷惑防止条例」改正案につきましては、表現の自由に関わる内容が含まれており、しかも、「名誉毀損罪」と同様の内容を含みながら、刑法上の「名誉毀損罪」では親告罪、他方の「迷惑防止条例」では非親告罪といった、制度的に大きな誤謬を含みます。
まして、選挙や政治活動に関わる活動について、捜査権の濫用によって不当に規制がなされる恐れがあっては、我が国の先人達が歴史を重ねてせっかく得て来た民主主義にとっても脅威となります。
念のため言えば、3月19日現在、この度の「迷惑防止条例」改正案は、警視庁のWebサイトにて「条例案の概要」のみが拝見できるだけで、完全に条文化された改正案として公開がされているわけでもありません。都民によって条文の厳密な文言の確認ができる状態にもなく、それにもかかわらず3月末の条例成立を目指しているとなれば、本来必要であったはずの都民による条例の理解・議論が充分にできているとは言いがたく、あまりに拙速と判断せざるを得ません。
したがって、表現の自由の観点、また、民主主義の健全な発展を願う立場から、この度の「迷惑防止条例」改正案につきましては、廃案としていただきたく存じます。


以上

女子現代メディア文化研究会
代表 山田久美子



[注]
※1:「条例案の概要」(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/higai/meibou_comment.files/meibou_an.pdf)
 
・「「迷惑防止条例」改正案に反対する意見書 」(PDF版256kb)

※誤字修正しました。失礼いたしました。
「意見の理由」の「(5)について」中、「検証や議論を」→「検証や議論が」(3月28日)
 末尾文責部分「山田久美子以上」→「山田久美子(3月28日)

2018年2月26日月曜日

意見書について千葉市からご回答をいただきました

本年1月15日に、千葉市宛にお送りしました私どもの意見書について、千葉市こども未来局こども未来部健全育成課(以下「同課」)から、2月9日にメールにてご回答をいただくことができましたのでお知らせいたします。
なお、私どもが千葉市に送らせていただいた意見書は、「千葉市の市内コンビニエンスストア店舗の自主規制に関する「事業」について、廃止を求める意見書」です。

まず、意見書にご回答をいただけましたことについて、千葉市のこの度のご対応に感謝申しあげます。

ご回答の内容について要約すると次のようになります。
  • 同課としては、事業の内容、経過ともに適切であると考えている
  • ミニストップ株式会社と千葉市長の共同記者会見は、同社から依頼を受けて開催した
  • 平成29年度予算における同事業の事業費は、執行の見込みがないことから不用額として決算に計上する予定であり、平成30年度は現在のところ取り組みの実施は考えていない
私どもがそもそもの問題とした、「事業」をとおしての、行政としての私企業への不適切な関わり方については、意見書で指摘したとおりで、私どもといたしましては不適切であったという考えに変わりはありません。
また、問題の根本には、「事業」は千葉市の立案で進められてきたのであって、千葉市が責任を負っているという部分があります。共同記者会見に限ったことではなく、こういった観点からの「事業」についての言及がなく、残念ながら自らの責任についてどれほど顧みられているのかは不明です。
一方、「成人向け雑誌」を包装する色付きフィルムなどのために使われる予定であった千葉市の税金は、不要額として決算に計上する予定とのことです。意見書で指摘しましたが、ミニストップ社の決定では、販売中止とする「成人向け雑誌」について、各自治体の条例の指定基準を用いることになりました。これにより、千葉市が進めてきた「事業」上で、規制対象となる図書の指定基準に、全国の各自治体の条例の基準を用いる結果となってしまったわけで、宙に浮く形となった税金の使い道についても疑問を呈しておりました。しかしながら、これについては平成30年度の取り組みの実施は見送られる予定とのことで、少なくとも平成30年度中は、従うべき千葉市の条例を逸脱し、千葉市の税金が使われるという運用は免れることになったようです。

ご回答いただいた千葉市の誠意に感謝申しあげつつ、 今後も、千葉市の取り組みについては、注視していきたいと考えております。



以上

女子現代メディア文化研究会
代表 山田久美子