2022年4月15日金曜日

国連女性機関の「月曜日のたわわ」広告への抗議意見についての疑義

 【はじめに】

 国連女性機関本部が、「月曜日のたわわ」の全面広告について抗議する書面を日経新聞に送付していたとの一部報道がございます。(※1)
 報道における国連女性機関の意見について2点の疑義を呈します。


【疑義】

(1)胸が大きな女性の表象が含まれる広告が排除されると、胸の大きな実在する女性が疎外感を持つ場合があります。そうした女性にとってはエンパワーメントとは逆とならないか。

(2)国連女性機関が性的か否かの判断をしミニスカート姿を含め性的であるという基準であれば、国連女性機関の理想とする「女性像」の押し付けとならないか。


【疑義の詳細】

(1)について。そのように疎外感を持つ胸が大きな女性が、「女性のエンパワーメント」の対象外となってしまうことについて疑問があります。日本の広告にはJARO(日本広告審査機構)などが取り扱う案件はありますが、広告の排除や掲載中止はあくまで慎重な議論に基づいていなければなりません。

(2)について。規範の判断基準は社会集団によって異なりますが、国連女性機関が判断の主体となっている場合、国連女性機関の価値観の反影が含まれるという問題があります。 
 「アンステレオタイプアライアンス」において「ジェンダー平等」などと謳っておりますが、それは結局の所、国連女性機関が理想とする「ジェンダー平等」であり国連女性機関が社会集団として共有する女性の性規範・理想像を含むのではないかという点があります。
 現在の日本には、実在する人間としてのミニスカートの女子高生は存在します。その女子高生に国連女性機関が直接的に性的規範の圧力を及ぼすことになる可能性自体については検証されなければなりません。それはすなわち、「国際スタンダード」が実のところ西洋的価値観、あるいは、西洋を発祥とする宗教的価値観ではないか? そしてそれにより、日本人の性規範を指導しようという態度ではないか? ということについてです。日本人も含めたアジア人が、あくまで客体として西洋に指導される側でいるべきというならば、ポストコロニアルな視点からも容認できません。
 日経新聞についてもまた、同新聞社が「アンステレオタイプアライアンス」に加盟ているといっても、同新聞社の価値観や理想があります。まして、日本の一般企業の広告が国連女性機関の理想や西洋の性規範の宣伝目的で存在しているのではありません。
 当該広告については日本国内で現在も議論が続いておりますが、まずは日本国内の主体的な議論にまかせるべきであると考えます。


以上

女子現代メディア文化研究会代表/デザイナー・アートディレクター
山田久美子


※1:国連女性機関が『月曜日のたわわ』全面広告に抗議。「外の世界からの目を意識して」と日本事務所長/2022年04月15日(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6257a5d0e4b0e97a351aa6f7?utm_campaign=share_twitter&ncid=engmodushpmg00000004